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法人化している不動産オーナーは要注意。 約60年ぶりに見直される「株式評価」とは?相続税が高くなる可能性を分かりやすく解説(その1)

カテゴリ:相続

こんにちは。

葛飾区立石で不動産と相続のお悩み解決しています、株式会社福寿アセットの小泉賢修(こいずみ けんしゅう)です。

 

本日は「法人化している不動産オーナーは要注意。約60年ぶりに見直される「株式評価」とは?相続税が高くなる可能性を分かりやすく解説

というテーマです。今回のテーマは長くなってしまったので、2回に分けてお話しさせていただきます。


■株式評価の見直しが考えられています

相続対策として、資産管理会社を設立し、アパートやマンション、土地などを法人名義で保有している不動産オーナーの方は少なくありません。

 

法人化には、所得税や法人税の調整、家族への所得分散、資産管理のしやすさ、将来の事業承継など、さまざまなメリットがあります。

 

一方で、法人化している場合、相続のときに引き継ぐ中心となるのは、不動産そのものではなく「会社の株式」です。

 

いま、その非上場会社の株式を相続税のためにどう評価するのかについて、国税庁で見直しの議論が進められています。

まだ新しい制度は決まっていません。しかし、有識者会議で出ている意見を見ると、現在よりも株価が高く評価される会社が出てくる可能性はあります。

特に、不動産を多く保有する資産管理会社や、これまでの評価方法によって株価が比較的低く出ていた会社は、今後の動向を注視しておきたいところです。

今回は、「株式評価とは何か」という基本から、現在の評価方法、見直しが議論されている理由、そして不動産オーナーにどのような影響が考えられるのかを、できるだけ分かりやすく解説します。


法人で不動産を持つと、相続するのは「会社の株式」



まず、個人名義でアパートを持っている場合を考えてみましょう。

個人名義の土地や建物は、相続が発生すると、その土地や建物そのものが相続財産になります。

一方、資産管理会社を作り、その会社名義でアパートや土地を保有している場合は少し違います。

相続人が引き継ぐのは、アパートそのものではなく、その会社の株式です。

たとえば、父親が資産管理会社の株式を100%持っていて、その会社が賃貸マンションを所有しているとします。この父親が亡くなった場合、子どもが引き継ぐのはマンションそのものではなく、「マンションを持つ会社の株式」です。

つまり、相続税を考える際には、

「会社がいくらの価値なのか」
「その会社の株式はいくらなのか」

を計算する必要があります。

この株式の価値を計算することを、「株式評価」または「自社株評価」と呼びます。


株式評価は、会社の値札を決める作業です

 

上場企業であれば、株価は証券取引所で毎日決まっています。

たとえば、ニュースで見る大企業の株価は、買いたい人と売りたい人の取引によって市場で決まっています。

しかし、多くの資産管理会社や同族会社は上場していません。

そのため、日々の市場価格がなく、「この会社の株は1株いくらです」と簡単に言えるものではありません。

そこで、相続税や贈与税を計算するために、国税庁が定めたルールに沿って株価を計算します。

現在の評価では、主に次のような要素が見られます。

・会社が持っている土地、建物、現預金、有価証券などの資産
・借入金などの負債
・会社がどれくらい利益を出しているか
・会社が配当を出しているか
・会社の規模
・株式を取得する人が会社の経営を支配する立場かどうか

つまり、単純に「不動産がいくらあるか」だけでは決まりません。

会社の資産、利益、借入、会社規模、株主構成などをもとに、相続税のための会社の価値を計算していきます。


現在の株式評価には、主に3つの考え方があります


現在の制度では、会社の規模や株主の立場などによって、主に3つの評価方法が使われます。

専門用語は難しく見えますが、考え方はシンプルです。

1.類似業種比準方式

これは、「似た業種の上場会社と比べて、どれくらいの会社か」という考え方です。

会社の配当、利益、純資産などを、同じ業種の上場会社と比較して株価を求めます。

たとえば、不動産賃貸業を営む会社であれば、一定の基準に従って、似た業種の上場会社の数値を参考にしながら計算します。

会社の規模が比較的大きい場合には、この方式が中心になることがあります。

2.純資産価額方式

これは、「会社が持っている資産から借入金などの負債を引くと、どれくらい残るのか」という考え方です。

たとえば、会社が不動産や現預金を多く持っている場合、その資産を相続税評価ベースで洗い替えて計算します。

イメージとしては、「会社を清算して資産を整理した場合に、最終的にどれくらいの価値が残るか」に近い考え方です。

不動産を多く保有する資産管理会社では、この方法による評価額が高く出ることがあります。

3.配当還元方式

これは、主に少数株主が取得する株式について、配当をもとに価値を計算する方法です。

会社の経営権を持たない株主にとっては、「その会社の資産を自由に動かせるか」よりも、「将来どれくらい配当を受けられるか」が価値の中心になる、という考え方です。

ただし、相続人が会社の経営権を引き継ぐようなケースでは、通常、この配当還元方式ではなく、類似業種比準方式や純資産価額方式が中心になります。



現在の制度では、同じような会社でも株価に大きな差が出ることがあります


今回の見直し議論の大きなきっかけは、評価方法によって株価に大きな差が出ることです。

たとえば、A社とB社があるとします。

どちらも不動産を多く保有し、家賃収入も近く、実際の資産規模も大きく変わらないとします。

しかし、会社規模や適用される評価方法が違うだけで、

A社の株価は3億円
B
社の株価は6億円

というように、相続税評価額に大きな差が出る可能性があります。

もちろん、実際の計算はもっと複雑です。

しかし、読者の方に知っていただきたいのは、「会社が持つ不動産が同じくらいでも、株価が同じとは限らない」という点です。

現在の制度では、会社規模や株主構成、評価方式の違いが、相続税の計算に大きく影響することがあります。


国税庁は、何を問題視しているのでしょうか

国税庁の有識者会議では、現在の制度について、大きく4つの視点から議論が行われています。

1.評価方法による差が大きすぎないか

同じような資産内容の会社であっても、会社規模や評価方式によって評価額が大きく変わる場合があります。

特に、類似業種比準方式による評価額が、純資産価額方式による評価額を大きく下回るケースがあることが問題として指摘されています。

「実際には多くの資産を持っている会社なのに、評価方法によって株価が低く出ることがある。この差は本当に公平なのか」

これが見直しの出発点です。

2.評価額を意図的に下げる余地がないか

現在の制度では、会社規模、利益、配当、株主構成などによって評価額が変わります。

そのため、相続や贈与の直前に会社の形を調整し、株価を低く見せるような対策が行われる可能性も指摘されています。

もちろん、通常の法人運営まで問題視されているわけではありません。

ただし、有識者会議では、「評価方法の違いを利用して、実態より極端に低い株価になるケース」への対応が論点になっています。

360年前の前提が、今の時代に合っているのか

現在の非上場株式評価の基本的な考え方は、昭和39年頃に作られました。

当時と現在では、金利水準も、企業のあり方も、事業承継の方法も大きく変わっています。

たとえば、配当還元方式で使われる還元率については、長年見直されておらず、現在の低金利環境との関係が議論されています。

また、上場会社の株価を参考にして、非上場会社の価値を計算することが本当に適切なのか、という根本的な意見も出ています。

4M&Aや第三者承継が増えた時代に合っているのか

昔は、会社は子どもが引き継ぐことが一般的でした。

しかし現在は、親族内承継だけでなく、従業員承継、第三者承継、M&Aなど、会社の引き継ぎ方が多様になっています。

M&Aの実務では、会社の資産だけではなく、将来どれくらい利益を生むか、どれくらいの収益力があるかも重視されます。

そのため、相続税のための株価評価も、より会社の実態に近い形へ近づけるべきではないか、という議論が出ています。


今後、どのような評価方法になる可能性があるのでしょうか

ここで最も大切な点をお伝えします。

新しい計算式は、まだ公表されていません。

したがって、「今後は必ずこの計算方法になります」と断定することはできません。

ただし、有識者会議で出ている意見を見ると、今後は次のような方向性が検討される可能性があります。

現在

会社規模や株主の立場によって、複数の評価方法を使い分ける。
評価方法によって株価に大きな差が出る場合がある。
上場会社との比較や、純資産、配当などを組み合わせて計算する。

見直し後に検討され得る方向性

会社規模による極端な差を小さくする。
上場会社との比較だけに頼らず、会社そのものの価値を重視する。
不動産などの資産だけでなく、将来の収益力も評価に反映する。
株価を不自然に低くすることができる仕組みを見直す。
事業承継への影響を考慮し、評価制度と納税支援を一体的に考える。

有識者会議では、将来の利益や収益力を重視する「収益還元的な評価」や、企業価値を純資産と収益力の両面から見る考え方も紹介されています。

ただし、収益力を重視すれば、必ず株価が上がるわけではありません。

利益を安定して出している会社は高く評価される可能性がありますが、利益が少ない会社、赤字が続く会社、収益力が低い会社では、評価額が下がる可能性もあります。

つまり、今後の見直しは「すべての会社の株価を上げる制度」ではなく、「会社の実態により近い評価へ近づける議論」と考えるのが適切です。


資産管理会社の株価が高く評価される可能性がある理由

それでは、なぜ不動産を持つ法人は注意が必要なのでしょうか。

理由は、資産管理会社には、次のような特徴があるためです。

・土地や建物など、金額の大きい資産を持っている
・家賃収入があり、一定の利益が出ている
・借入金の返済が進むと、会社の純資産が増えやすい
・不動産の価格上昇により、資産価値が大きくなっている場合がある
・現行制度では、評価方式によって資産価値が十分に反映されていないケースがある

たとえば、現行制度で類似業種比準方式を使うことで、純資産価額方式より低い評価になっている会社があります。

今後、評価方法による差を小さくし、会社が持つ資産や収益力をより反映する方向になれば、こうした会社では株価が上がる可能性があります。

また、配当還元方式についても、還元率の見直しが行われる場合、少数株主が持つ株式の評価額が上がる可能性があります。

ただし、法人化している不動産オーナーのすべてが、同じように影響を受けるわけではありません。

借入金がどれくらい残っているか。
不動産の相続税評価額はいくらか。
会社にどれくらい現預金があるか。
家賃収入や利益が安定しているか。
どの評価方式が使われているか。
株主構成がどうなっているか。

こうした事情によって、影響は大きく変わります。

【図解:現行評価と、実態に近い評価へ見直される可能性のイメージ】


いかがでしたでしょうか?

長くなりましたが、本日は「法人化している不動産オーナーは要注意。60年ぶりに見直される「株式評価」とは?相続税が高くなる可能性を分かりやすく解説というテーマでここまでお話させていただきました。

続は次の記事でお読みください。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。



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