こんにちは。
葛飾区立石の不動産屋 株式会社福寿アセットの小泉賢修(こいずみ けんしゅう)です。
前回は「売却トラブルに見舞わられたAさんの経験談」についてお話をいたしました。
本日は「不動産売却で潜む5大トラブル」というテーマでお話させていただきます。
不動産売却は大きな金額が動く重要な取引であり、その過程で支払いや契約、法的な問題に巻き込まれることがしばしばあります。しかし、これらのトラブルは十分な準備と理解によって未然に防ぐことが可能です。ここでは不動産売却時に発生しやすい5つのトラブルに焦点を当て、その解説を行います。
1. 不動産売却で多いトラブルとは
1-1. 仲介手数料の金額に関するトラブル
不動産売却において特に警戒すべきなのが、仲介手数料に関する問題です。悪質な不動産会社が法外な金額を要求する例があるため、注意が必要です。
仲介手数料は法律で以下のように上限が定められています。
200万円以下の金額:取引額の5%+消費税
200万円超400万円以下の金額:取引額の4%+2万円+消費税
400万円超:取引額の3%+6万円+消費税
これを超える支払いが求められた場合は注意が必要です。上限内であれば法的な問題は生じませんが、値引きや買い取るので仲介手数料を無料で対応してくれるという不動産会社も存在するため、比較検討が大切です。
また、仲介手数料は決済・引き渡し時に一括で支払う場合と、売買契約成立時と決済・引き渡し時の2回に分けて支払うことがあります。売買契約時に全額の仲介手数料の支払いが要求される場合は、違法ではありませんが、きちんと決済まで進捗を確認するなど必ず注意が必要です。
仲介手数料に関するトラブルの回避策として以下が挙げられます。
・複数社で比較検討する
・仲介手数料の計算方法や金額は契約書に必ず明記してもらう
・仲介手数料以外の費用についても確認し、発生する場合は契約書に記載して明確にする
なお、仲介手数料には一般的な広告費や内覧業務に伴う費用も含まれているため、これらが別途請求されないよう留意が必要です。
1-2. 媒介契約に関するトラブル
媒介契約に関するトラブルの中でも多いのが、囲い込みの問題です。
囲い込みは、不動産会社が売り手と買い手の両方から仲介手数料を得るために、物件の情報を公開せず他社からの問い合わせや紹介を制限する行為です。特に専属専任媒介契約の場合に発生しやすい事例です。
囲い込みが行われると、売却活動が遅延したり、物件が適正な価格で売却されなかったりするデメリットが生じます。買い手を意図的に見つけられないようにして、物件の価格を下げさせる可能性もある極めて悪質な手法です。
囲い込みの事例は売主が気づかない場合が多く、防ぐために以下の3点に留意することが重要です。
・不動産会社がレインズに登録されているか確認する(専任媒介契約の場合)
・不動産会社が積極的に売却活動を行っているか確認する(広告などもチェック)
・物件の価格が相場から著しく外れていないか確認する
大手不動産会社であっても、囲い込みを禁じているかは不確かなため、契約後も売却活動が適切に行われているかを確認し続けることが必要です。
1-3. 物件に関するトラブル
不動産取引において、特に留意すべきなのが「隠れた瑕疵」に関する問題です。隠れた瑕疵とは、不動産購入時に買主が気付けない欠陥や問題点のことを指し、具体的には土台部分のシロアリ被害や配管の水漏れなどが挙げられます。これらの瑕疵は、故意や過失がなくても、法的な契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)が発生する可能性があります。従って、売主は物件の状況を正確に伝えることが求められます。
隠れた瑕疵に関するトラブルは、あらゆる物件で発生する可能性があり、売主が発見できない場合でも契約不適合責任が問題視されることがあります。ただし、買主が取引時にその瑕疵を知っているか、または買主が注意を払っていれば発見可能であると考えられる場合は、買主は契約不適合責任を主張できません。
トラブルを未然に防ぐために、売主が事前にできる対策としては以下が挙げられます。
・ホームインスペクション(住宅診断)を実施する
・重要事項説明書等に隠れた瑕疵について記載する
・買主に対して売買契約前に建物の状況を詳しく説明する
・既存住宅売買の瑕疵保険に加入する
重要事項説明書は物件の詳細情報をまとめた書類であり、買主とともに不備がないことを確認でき、契約不適合責任のリスクを軽減できます。瑕疵保険は、契約不適合責任が生じた際に損害金を補償してくれるため、加入が推奨されます。
1-4. 支払いに関するトラブル
支払いに関するトラブルの中でも多いのは、契約を結んだにもかかわらず買主からの支払いがなされないというケースです。具体的な事例としては、ローン審査が通らずに残額の支払いができなくなった場合が挙げられます。これにより、売主と買主の間で手付金の返却、媒介契約の取り扱い、残金の支払いなどが問題となります。
支払いがなされないトラブルへの対処法は以下の通りです。
・売買契約を結ぶ前に、ローンが組めるかを確認する
・契約書に「ローンが通らなかった場合の特約」を記載し、取り決める
ローン審査に関する支払いトラブルの難しい点は、ローンの組めるかどうかは個人情報に依存するため、売主が予測しきれない点です。したがって、買主がローンを組めるかどうかは事前に確認するよう促すことが重要です。ローン特約は、解除条件型(当然失効型)と解除権留保型(解除権行使型)の2種類があり、解除の条件が異なるため、これらを確認の上で対処します。
ローン審査に通らなかったため、売買契約を解除したいという事例は一般的です。このトラブルは金額が大きく関わる上、対処に時間がかかるため、事前に対策を講じておくことが重要です。
1-5. 契約解除に関するトラブル
契約解除に関するトラブルは、不動産売買において特に頻繁に発生します。契約関連の知識が複雑であるため、不十分なまま進めてしまう売主や買主が多いことが原因です。多くの場合、問題が発生するのは不動産会社の選定に関連しています。信頼性の低い業者を選んだ場合、都合のよい契約になっていたり、通常の契約書に記載されるべき事項が抜けていたりすることがあります。
具体的な事例としては、住宅ローンの事前審査を受けずに急いで売買契約を締結するケースや、手付金は支払われたが資金繰りができないため契約解除を希望する際、契約解除に関する支払いや契約の取り扱いで問題が発生することが多いです。
契約解除に関するトラブルの対処法は以下の通りです。
・不動産会社から具体的なトラブル事例を共有してもらう
・売買契約締結前に、契約解除に関する明確な取り決めを行う
・弁護士などに相談する
契約解除に関する専門的な知識が一般的には得難いため、不動産会社にサポートを依頼することが一般的です。不動産会社が親切でない場合、契約解除に関する情報提供や買主との交渉を促すべきです。
また、不動産売買に関するトラブルは国土交通省のデータベースで確認できます。キーワードや事例種別で検索できるため、情報収集に役立ちます。
参考:国土交通省「不動産トラブル事例データベース」
https://www.retio.or.jp/trouble/
いかがでしたでしょうか?
本日は「不動産売却で潜む5大トラブル」というテーマでお話させていただきました。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。