遺留分について
こんにちは。
葛飾区立石の不動産屋 株式会社福寿アセットの小泉賢修(こいずみ けんしゅう)です。
前回は「不動産売却の落とし穴」についてお話をいたしました。
本日は「身近な遺留分の話」というテーマでお話させていただきます。
みなさんは遺留分という言葉を聞いた事がありますか?相続の現場では、この遺留分によって相続人が頭を悩ませるなることが多くあります。
以前は「遺留分」と言われていましたが、2019年に一部内容の変更があり、現在は正確には「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんげんさいがくせいきゅう)」という名称になります。
これは、配偶者や子供、両親など直系の親族のみが請求できる、最低限与えられる相続分のことです。法定相続分と言われる権利の1/2がその金額に相当します。
ある方の例をご紹介いたします。
Aさんは父と同居し、介護をしながら生活していました。そのお父様が最近お亡くなりになり、相続が発生しました。父は都内にある自宅(Aさんも同居)と多少の現金を残すだけでしたので、幸いにも相続税は発生しなかったとのことです。
しかし、その後に問題が発生しました。Aさんには妹がおり、妹が自分にも財産を1/2もらう権利があると主張してきたのです。Aさんは父には現金がほとんどなく、自宅しか残っていないことを話したそうですが、何ももらえないことに妹は不満があるようで、引きません。後日、妹は遺留分侵害額請求というものがあり、最低限のもらう権利があるということで750万円をAさんに請求したそうです。
Aさんは父にそんな現金もなく、払えるはずがないと伝えたのですが、妹は自宅の価値を調べたら3000万円はあるので、その分の請求額だとのことでした。結局話は折り合わず、現在は弁護士さんを通しながら、裁判を行っているとのことです。
このような例が少なくありません。ここでポイントになるのが、大きく2つあります。
1つめは、遺留分侵害額請求は現金で相手方に渡さないといけないことです。なので、Aさんの場合、父はほとんど現金がなかったため、Aさんの持っている現金を妹へ渡さないといけない点です。2つめは不動産の価値は「時価」であることです。相続税の場面では不動産は他の財産に比べて、優遇措置が多くあり、自宅は実際の価値よりも低い評価で相続税を計算することが出来ます。しかし、この遺留分侵害額請求になると、不動産の価値は本来の価値で計算されるので、金額が大きくなるのです。そのため妹は自宅の不動産の価値を調べ、その分の権利を現金で兄からもらおうとしたのです。しかし、不動産は同じものがないと言われるほど様々な評価方法があるため、兄妹で互いの主張が折り合わず、最終的に裁判になるケースも少なくありません。
では、このような問題を事前に解決する方法はなかったのでしょうか?
ここでいくつかの対策をご紹介いたします。
1つめ、遺留分放棄の事前許可の審判を行う。
相続発生前に遺留分の放棄を裁判所で手続きすることが出来ます。ただし、これはもらう側の人(今回の場合、妹)が裁判所で手続きを行う必要があります。また、遺留分の権利を主張できなくなったとしても、法定相続分の権利がなくなった訳ではありませんので、注意が必要です。遺留分の放棄と合わせて、父には遺言書を書いてもらうなどの対策も必要となります。
2つめ、一時払い終身保険への加入。
父が亡くなった時に保険金がAさんに入るという生命保険に加入にすることで、Aさんが受け取る保険金は民法上の相続財産ではなくなります。預貯金分の財産をAさんが取得することができます。そうすることで、仮に妹から請求されても受け取った保険金から支払うことが出来るようになります。
3つめ、遺言書に付言事項を入れる。
遺言書には誰に何を渡すか定めるために書きます。この文章が箇条書きでたんたんと書かれているものなので、どこか味気ないです。このままでは、なぜ遺言書を書いた人がこのような分け方で考えたのか、家族みんなへの感謝の想いなどが伝わらず、もらい分が少ないと感じた人が不満をもつこともあります。このような不満を少しでも解消できるように付言事項というメッセージを遺言書の最後に記載することができます。恥ずかしいからと書くのを控える方もおりますが、実際に遺言書を家族で開くときに。みなしっかりと内容を読んで納得していただけるので、私はおすすめしています。
以上が遺留分についての対策です。他にも様々あると思いますが、遺留分問題を完全に消すことは困難です。そのため。一番の方法は生前のお元気なうちに家族同士で話し合い、時間をかけて内容を決めていくことが大切です。ぜひご家族で集まる機会があればお話ししてみてください。
いかがでしたでしょうか?本日は「身近な遺留分の話」についてお話させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。