こんにちは。
葛飾区立石不動産会社、株式会社福寿アセットの小泉賢修(こいずみ けんしゅう)です。
前回は「日本の相続税、高すぎる?過払い分を取り戻す方法と納めすぎの理由」についてお話をいたしました。
本日は「相続税の節税対策:特例、控除、節税ポイントの解説」というテーマでお話させていただきます。
相続税は、親族が亡くなった際に直面する課題の一つです。早めに対策しておくことで、節税効果を最大限に引き出すことができます。本記事では、不動産購入、生前贈与、生命保険の非課税枠活用、税額控除など、相続税のさまざまな節税方法を分かりやすく紹介します。相続税を少なくするための方法をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。
◆相続税の節税で重要な「基礎控除」とは?
親族が亡くなり、相続税が発生する際に重要なのが「基礎控除」です。これは、相続税の計算時に使われる非課税枠を指します。財産から基礎控除の額を差し引いた部分に対してのみ、課税される仕組みです。まずは、亡くなった被相続人の法定相続人の人数を把握することが重要です。相続税を節約するための対策には、基礎控除のほかに税額控除などもあります。
◆基礎控除の計算方法
相続税における基礎控除は、以下の計算式で求められます:
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
この計算式から、法定相続人の人数によって相続税の控除額が大きく変わることがわかります。例えば、法定相続人が1人の場合、被相続人の財産が3,600万円を超えると相続税がかかります。しかし2人の場合は、4,200万円を超えた場合にのみ相続税がかかります。逆に、基礎控除より少ない財産であれば相続税は発生しません。
・節税の基本知識
相続税を節約するために知っておくべき基礎知識は次のとおりです:
1.死亡退職金など、相続税がかからない財産もある
2.財産の種類によって評価方法が変わる
相続税を節約したい場合、これらの知識はしっかり把握しておきましょう。基礎控除の範囲に収まるよう、生前に財産を整理しておくことが節税の鍵となります。また、非課税の財産に組み替えるといった工夫もおすすめです。
◆相続税が非課税となる財産と評価方法
親族が亡くなった際の相続税について考えるとき、相続財産が基礎控除額を下回る場合、相続税が非課税となるということは重要なポイントです。
・相続税が非課税となる財産について
相続財産が基礎控除額を下回れば、相続税は非課税となります。そのため、生前から自身の財産を少しでも移転しておくことで、課税対象となる相続財産を減らすことができます。具体的には家族への「生前贈与」が一案です。ただし、年間110万円を超える現金を贈与すると贈与税が発生するため注意が必要です。
さらに、相続した財産でも非課税となるものがあります。例えば、被相続人が勤めていた会社から支払われる「死亡退職金」などは、「500万円×法定相続人の数」までが課税対象から除外されます。
◆財産の種類による評価方法の違い
相続財産の種類によって、相続税の評価方法が異なることにも注目しましょう。例えば、現金の場合、その額がそのまま相続税の評価額となりますが、不動産の場合は、相続税路線価などが基準となる評価方法で時価の約8割程度で評価されます。
そのため、現金をそのまま置いておくより、不動産に組み替えておくことで相続財産の評価額を下げることができます。こうすることで、非課税となる基礎控除の範囲を有効に活用できます。
また、不動産を相続する際におすすめなのが「小規模宅地等の特例」です。これは、一定の条件を満たす土地の相続税評価額を80%減額できる特例であり、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
相続税の節税対策には、財産の種類や評価方法を理解し、適切な特例や控除を活用することが大切です。
◆相続税の節税ポイント
相続税を少しでも節税するために、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
・贈与を活用する: 生前贈与は、相続財産を減らすための有効な手段です。年間110万円以下の生前贈与(暦年贈与)などの特例を活用しましょう。
・非課税枠のある生命保険を活用する: 生命保険金には非課税枠があります。
・不動産に換える: 現金よりも節税メリットが大きい不動産に換えることで、相続財産の評価額を下げることができます。
・非課税となるお墓や仏壇を購入する、または国や自治体へ寄付する: お墓や仏壇などは、相続税の課税対象外です。
・養子縁組を活用して法定相続人を増やす: 法定相続人が増えることで、基礎控除額が増加します。
◆毎年110万円以下の生前贈与(暦年贈与)
1月から12月までの1年間で110万円以下の贈与を行う場合、贈与税はかかりません。しかし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると、「定期贈与」と見なされ、総額に対して贈与税が課税される可能性があります。このリスクを回避するため、毎年の贈与において都度、贈与契約書を作成するなどの対策が有効です。
◆生命保険への加入
相続税の節税方法として、生命保険加入は非常に効果的です。生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があるためです。特に、終身保険は一生涯にわたって保障が続くため、相続時にも安心です。
控除の対象となるのは相続人が受け取る保険金のみで、相続人以外が受取人に設定されている場合、その分は非課税枠の対象外となります。生前に受取人を確認しておきましょう。
◆不動産の購入
現金や預貯金の場合、その金額がそのまま相続財産として計上されます。しかし、不動産の場合は時価が影響するため、資産価値が変動します。また、換金しにくいため、土地の相続税評価額は時価の約8割程度に抑えられます。評価額が下がることで、節税効果が期待できます。
◆お墓などの非課税財産を生前に購入
墓地や墓石、仏壇、仏具などは、相続税の課税対象外です。いずれ自分が亡くなった後に相続人が購入しなければならないことが予想される場合、生前に用意しておくと良いでしょう。これは、相続税の節税にもなります。ただし、墓石などをローンで購入する際は、死後にローン残高が残っている場合、その残額分は相続税で控除されないため、事前に支払いを済ませておくようにしましょう。
さらに、賃貸物件など他人に貸している不動産は、貸し出ししている権利分の評価額が下がるため、より一層節税に有利です。
◆小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす宅地の評価額を下げ、相続税の負担を軽減する制度です。被相続人が自宅として使っていた宅地などの場合、最大330㎡まで、評価額を80%減額できます。
また、被相続人と同居していなかった場合でも、以下の条件を満たせば「家なき子特例」が利用可能です。
◆被相続人に配偶者や同居の相続人がいないこと
相続開始前の3年間、持ち家に住んでいないこと
相続した土地を、相続開始から相続税の申告期限まで所有し続けていること
相続開始時に住んでいた家をこれまで一度も所有したことがないこと
国や地方公共団体への寄付
相続人が国や地方公共団体などへ寄付した場合、その財産分の相続税が非課税となるのが寄付金控除です。ただし、寄付する財産は相続や遺贈によって取得したものであることや、相続税の申告期限までに寄付するなどの条件があります。非課税枠を活用するために寄付を検討する場合は、適用される条件を細かく確認しましょう。
◆養子縁組で基礎控除額を増額
相続人が少ない場合、基礎控除額も少なくなり、節税には不利です。そこで検討したいのが、養子縁組を活用する方法です。実子がいない場合、養子2人までが対象となり、実子がいる場合は養子1人までが対象です。例えば、祖父母が孫を養子にする「孫養子」という方法もあります。ただし、養子縁組の対策には注意点があるため、慎重に検討しましょう。
◆相続税の税額控除と節税対策の重要ポイント
相続税の負担を軽減するためには、税額控除の知識を持ち、適切な対策を講じることが重要です。本記事では、相続税の税額控除に焦点を当て、その概要や適用条件を詳しく解説します。また、相続税対策のための重要なポイントも併せて紹介します。
・相続税の税額控除
相続税の税額控除とは、相続税の支払いに対する負担を軽減するための制度です。以下の項目を事前に把握しておくことで、相続時に節税効果を最大限に引き出すことができます。
・贈与税額控除
贈与税額控除は、被相続人が亡くなる前の3年以内に贈与税を支払った場合、その分を相続税から控除する制度です。ただし、贈与税は年間110万円を超える金額に対して課税されるため、贈与税を支払っていない場合は控除を受けることはできません。
・配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、配偶者の法定相続分または1億6,000万円までの金額に対して相続税を非課税にできる制度です。ただし、配偶者には内縁の妻は含まれないため、注意が必要です。
・未成年者控除
法定相続人の中に未成年者がいる場合、その人が相続する財産に対して控除を適用できます。未成年者控除は、未成年者の生活を支援するための制度です。現在、未成年者の年齢は18歳までに変更されています。
・障害者控除
法定相続人の中に障害者がいる場合、その人が相続する財産に対して控除が適用されます。障害者は生活においてサポートを必要とすることが多く、控除は85歳未満の障害者に適用されます。
・相次相続控除
相次相続控除とは、10年以内に続けて相続が発生した場合に、先に納めた相続税額を控除できる制度です。短期間で同じ財産に対して2回の相続税を支払う事態を避けるためのものです。
・外国税額控除
外国税額控除は、被相続人の財産が外国にあり、外国で相続税が発生した場合、その分を一定限度まで控除する制度です。日本に住所がある場合、国内外の資産が相続税の対象となりますが、外国での相続税も支払わなければならない場合には、この控除が役立ちます。
◆相続税対策のポイント
相続税対策を効果的に行うために、以下のポイントを押さえておきましょう。
・不動産など財産が多い人はしっかりとした相続税対策が必要:特に富裕層の方は、生前にしっかりと対策を講じることで、次の世代に多くの資産を残すことができます。
・死後でも節税は可能だが、生前にしかできない対策もあるため注意:例えば、生前贈与は生前にしか行うことができません。
・二次相続のことも早いうちから考えておく:一次相続が発生した後、二次相続についても計画しておくことで、相続税の負担を減らせる可能性があります。
・不安がある場合は専門家に相談する:相続税の制度は複雑であるため、専門家のアドバイスを求めることも重要です。
相続財産が多い方は、特に相続税対策が必要です。ただし、金融資産が少ない場合、相続税対策として贈与や資産の組み換えを行うと、生活資金が不足する可能性があります。まずは現在の資産を把握し、余裕を持って対策を検討することが大切です。
◆おわりに
相続税対策では、特例や控除をうまく活用し、事前に対策を行うことが重要です。被相続人の財産が基礎控除分を超えると相続税が発生します。特に金融資産が多い人は、生前に不動産を購入したり贈与を行ったりして、しっかりと対策を立てましょう。ただし、相続の制度や仕組みは複雑で、不安を感じることもあるでしょう。そういった場合には、専門家に相談することをおすすめします。
いかがでしたでしょうか?
本日は「相続税の節税対策:特例、控除、節税ポイントの解説」というテーマでお話させていただきました。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。