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高齢で遺言書が書けない場合の対応策は?

カテゴリ:相続

こんにちは。

葛飾区立石の不動産屋株 式会社福寿アセットの小泉賢修(こいずみ けんしゅう)です。本日は「高齢で遺言書が書けない場合の対応策は?」というテーマでお話しさせていただきます。

 

■「添え手」で遺言書が無効になるケースも

遺言書は、遺言者の意思を正確に後世に伝えるための重要な手段です。

しかし、高齢で身体が不自由になり、遺言書作成が難しくなると、作成方法に注意しなければなりません。特に、遺言書を自筆で書く際に親族や第三者が手を添える「添え手」によって作成された遺言書は、法的に無効とされるリスクがあるため注意が必要です。

最高裁判所の判例(昭和62108日)によれば、他人が手を添えて作成することで、その意思が遺言者のものではなくなる可能性があると見なされる場合、遺言書全体が無効とされる恐れがあります。

こうしたリスクを避けるため、高齢で遺言書の作成が難しい場合でも、正確に意思を遺すための適切な方法を知っておくことが重要です。本記事では、添え手による遺言書の無効リスクを詳述するとともに、高齢者が身体の制約を乗り越えて確実に意思を伝えるための遺言書作成の方法を説明していきます。

 

■添え手によるリスクと最高裁判例

遺言書は遺言者自身が自分の意思に基づいて作成しなければなりません。しかし、手の震えや身体的な制約で遺言書を書くことが難しい場合、親族などがサポートとして手を添えてしまうケースがあります。この行為は、意図が善意であっても、遺言内容に他人の意思が介入していると見なされる可能性があるため、法的に無効となる危険性があります。

最高裁判所の判例(昭和62108日)によれば、遺言書作成時に第三者が手を添えたことで、その遺言が遺言者自身の意思であるかどうかが疑われる場合、遺言書全体が無効と判断されることがあります。このため、身体が不自由な遺言者が遺言書を作成する際は、添え手による支援を避け、適切な作成方法を選ぶ必要があります。

 

■身体が不自由な人のための遺言書作成方法

身体が不自由でも、適切な方法を用いることで遺言書を作成することは可能です。以下は、身体的な制約がある高齢者でも利用できる遺言書作成の方法です。

1. 公正証書遺言の利用

身体が不自由な方にとって、最も確実で安全な遺言書作成方法は「公正証書遺言」です。公正証書遺言は、公証人が遺言者から内容を聞き取り、それを文書化し、遺言者と証人に読み聞かせて確認する方式です。これにより、内容の正確性や法的信頼性が確保されます。

  • 手順
    1. 遺言者が公証役場を訪問するか、公証人に自宅や病院への出張を依頼。
    2. 公証人が遺言内容を聞き取り、それを筆記。
    3. 遺言者と証人に内容を確認し、遺言者が署名・押印。
    4. 公証人も署名し、遺言書を完成させる。
  • メリット
    • 内容が正確で、法的に有効とされる確率が非常に高い。
    • 公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がない。
    • 公証人の立会いによって証拠能力が高い。

2. 自筆証書遺言の補完

自筆証書遺言は、遺言者が全文を自分で書く必要があります。2020年の改正で、自筆証書遺言の一部である財産目録は、パソコンで作成してもよくなり、負担が軽減されました。しかし、遺言書本体は自筆である必要があるため、手が震える場合などには難しい場合があります。

■公正証書遺言の出張サービス

病気や高齢で外出が難しい方には、公証人が自宅や病院に出張して公正証書遺言を作成するサービスがあります。

これにより、寝たきりの方や移動が困難な方でも、自宅で安心して遺言書を作成することができます。出張サービスには、通常の手数料に加えて交通費などの加算がありますが、身体的な負担を大幅に減らすことができます。

  • 出張サービスの流れ
    1. 公証役場に出張を依頼し、日程を調整。
    2. 証人2人を同席させる(親族や利害関係のない第三者が適当)。
    3. 公証人が遺言者の意思を確認し、筆記・読み聞かせを行い、署名・押印。

■出張サービスを利用する際のポイント

公証人が出張する際、遺言者の意思能力の確認が重要です。意思能力が不十分と判断された場合、遺言書は無効となる可能性があるため、必要に応じて医師の診断書を用意しておくと良いでしょう。

■視覚や聴覚が不自由な場合の対応

遺言者が視覚や聴覚に不自由がある場合でも、公正証書遺言を作成することは可能です。視覚障害者には、公証人が遺言内容を口頭で説明し、遺言者の確認を取ります。聴覚障害者には、手話通訳者や筆談を利用して遺言内容を確認し、理解を確認してから署名・押印を行います。

■自筆証書遺言のリスクと注意点

自筆証書遺言には、内容の不備や法的無効リスクがあります。特に高齢で身体が不自由な方が自筆証書遺言を作成する際は、以下のリスクが考えられます。

  • 内容の不備:全文を自筆で書く必要があるため、内容が曖昧であったり、法的に必要な要件を満たしていないと無効となる。
  • 保管の問題:自宅で保管されることが多く、紛失や改ざんのリスクがある。これに対して、法務局の「遺言書保管制度」を利用すれば、安全に保管することができる。

■専門家のサポートとその重要性

遺言書作成には、法律や手続きに関する専門知識が必要です。弁護士や司法書士といった専門家のサポートを受けることで、法的なリスクを回避し、遺言書の有効性を確保することができます。特に公正証書遺言を作成する際は、専門家に相談することで、内容の法的整合性を保ちつつ、遺言者の意思に忠実な遺言書を作成することができます。

  • 専門家の役割
    • 遺言書の内容をチェックし、法的に有効であることを確認。
    • 遺言者が正確に意思を伝えられるようサポート。
    • 必要に応じて医師の診断書などを準備し、意思能力を証明。

■医師の診断書の取得と意思能力の確認

認知症や精神的な問題がある高齢者の場合、遺言書作成時に意思能力が不十分であると見なされることがあります。これを防ぐため、医師の診断書を取得し、意思能力が正常であることを証明することが重要です。診断書があることで、遺言書の有効性が高まり、後々の相続人間のトラブルを防ぐことができます。

■まとめ

高齢で遺言書の作成が難しい場合でも、適切な方法を選択することで、遺言者の意思を確実に後世に伝えることができます。添え手による遺言書作成のリスクを避けるため、公正証書遺言や専門家のサポートを活用し、法的に有効な遺言書を作成することが重要です。

1公正証書遺言の活用を考える

高齢で体が不自由な場合、公正証書遺言の活用は特に有効です。公証人が遺言者の意思を確認し、内容を正確に文書化するため、遺言内容が無効とされるリスクを最小限に抑えられます。さらに、公証役場で保管されるため、遺言書が紛失したり改ざんされたりする心配もありません。公正証書遺言は証拠能力も高く、遺言内容が争われた際にも有効です。

2専門家のサポートの必要性

遺言書作成においては、法律の専門知識が必要です。高齢者が遺言書を作成する際には、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することをお勧めします。専門家のサポートを受けることで、法的に有効な遺言書を作成し、遺言者の意思を正確に反映させることが可能になります。また、遺言内容に不備があった場合、専門家のチェックを受けることで修正が容易になります。

3医師の診断書を活用して意思能力を証明

高齢で認知症やその他の理由で意思能力に疑いがある場合、医師の診断書を取得し、遺言作成時に意思能力があったことを証明することが推奨されます。診断書を添付することで、遺言書の有効性が高まり、後に相続人間で遺言の有効性が争われた場合にも防衛策となります。これにより、遺言書が無効とされるリスクを軽減し、遺言者の意思を確実に実現できます。

4遺言者の状況に合わせた遺言書の作成

体が不自由で外出が難しい場合、公証人が遺言者の自宅や病院に出張して遺言書を作成するサービスもあります。これにより、遺言者の負担を軽減し、自宅や療養先で安心して遺言書を作成することができます。出張サービスでは、公証人が遺言者の意思を確認し、内容を正確に記録するため、証拠力も高まります。

5自筆証書遺言と保管方法

自筆証書遺言は、全文を遺言者自身が書く必要があるため、手軽に作成できるメリットがありますが、紛失や改ざんのリスクがあります。

これを避けるために、法務局の「遺言書保管制度」を利用するとよいでしょう。この制度を活用することで、遺言書が法務局で安全に保管され、遺言書の存在を確認しやすくなります。

遺言書作成時の心構え

高齢者が遺言書を作成する際には、以下の点を考慮することが重要です。

  • 早めの準備:遺言書作成は、健康状態が安定しているうちに行うことが望ましいです。早めに準備することで、意思能力を保った状態で正確な遺言書を作成できます。
  • 家族とのコミュニケーション:遺言書作成前に家族と話し合い、遺言内容を共有することで、後々の相続争いを防ぐことができます。
  • 法律専門家への相談:弁護士や司法書士に相談し、遺言書の内容や作成方法についてアドバイスを受けることで、法的リスクを減らせます。

6遺言書を作成した後の対応

遺言書を作成した後も、以下の点に注意することが重要です。

  • 定期的な見直し:状況の変化や法改正に応じて、遺言内容を見直し、必要に応じて修正を行います。
  • 保管場所の周知:相続人が遺言書の存在を知っていることが重要です。保管場所を家族に伝えるなどです。

 

 

■結論

高齢で遺言書の作成が難しい場合でも、適切な方法と専門家のサポートを活用することで、遺言者の意思を確実に伝えることができます。公正証書遺言は特に法的信頼性が高く、身体が不自由な方にとっても安心して選べる方法です。また、医師の診断書や専門家の助言を得ることで、遺言書の有効性を担保し、遺産分割における相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。

これらのポイントを押さえた上で、高齢者が意思を遺し、家族が安心して相続を行える環境を整えることが、最も重要な遺言書作成の目的となります。

いかがでしたでしょうか?

本日は「高齢で遺言書が書けない場合の対応策は?」というテーマでお話させていただきました。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

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